『天空の蜂』

天空の蜂 (講談社文庫)

天空の蜂 (講談社文庫)

天空の蜂、読了。


映画化されたということで、これを機に。
東野圭吾は久々でした。
やはり重厚感ある。

1995年に刊行された書き下ろし、という点が、この本の価値を高めている。


自衛隊ヘリの電子制御での奪取、犯人からの遠隔操作に依る政府・原発関係者への要求、携帯電話でのやりとり・・・。
Windows95が世に出る前にこんなものを描けるのかと。
そして、原発をめぐる国・関係者の思惑と人々の想い。


20年経った今も全く色褪せない、むしろリアリティが増し真に迫る、そんな作品である。
まさに、東野が後世の人々に問いかける作品であろう。


終盤に掛けては、加速していく展開の疾走感に引き込まれ。
「三島」が最後に独りごちた台詞は、出版から20年後、現代の我々に語りかけてくる言葉にも感じらる。
映画のエンドロール、この余韻に浸りたいね。


中盤は正直、読み終わると満足して映画はどうでも良くなるかと思ったけど。
この作品を映像でも見てみたい、登場人物の思いをどのような表情で描かせるのか、興味が湧いてきました。


そして、「沈黙する群衆」から一歩でも踏み出し、考えて行きたいと思う。


「彼等は様々な顔を持っている。人類に対して、微笑むこともあれば、牙を剥くこともある。微笑みだけを求めるのは、傲慢である。」


天空の蜂 (講談社文庫)

天空の蜂 (講談社文庫)