動物農場

動物農場 (角川文庫)

動物農場 (角川文庫)

イギリスのとある農場を舞台に、動物達の反乱(革命)から自治、そして外交に至る過程を、共産主義を鋭く風刺して描いた寓話。


原作が完成したのが1944年。日本では1972年に初版が発売され、2008年に55版を数える、ジョージ・オーウェル出世作であり、世界的ロングセラーだ。


当初は、ソ連をモデルとした共産主義の腐敗の歴史を象徴的に描いたものであったらしいが、その象徴は小異に目をつむれば、ドイツのファシズム体制やイラク、今ピンとくるのは、北朝鮮の体制であろうか。


しかし、読み終えて気付くのは、全体の流れとして、これは人類史の中で幾度となく繰り返された、権力の腐敗の歴史を描いたものでもあるということ。


大衆を蹂躙する絶対権力が跋扈する世の中では、その権力を打倒し、大衆から絶対的な支持を得る英雄が出現する。
しかし、その英雄、もしくはその子孫による統治が行われると、かつて大衆が忌み嫌った体制が、権力者の首をすげ替えただけの形で再び構築され、そしてまた時の英雄に打倒される、という構図である。
この物語の独裁者の名前が「ナポレオン」というのも皮肉を感じるところだ。


刻々と大きくなっていく体制の矛盾と欺瞞が、巧妙にシュールにユーモラスに、時に悲劇的に描かれている。
一度読んでおいて損はない。



ほか、「支配スルモノハ支配サレルモノニヨッテ支配サレテイル」構図を描いた『象を射つ』、なんかよくわかんない『絞首刑』、麻酔薬、殺菌剤、ナイチンゲール誕生以前の悲惨な病院の様子を描いた『貧しい者の最期』の三編の短編、というよりショートショート
あと、長ったらしくて難しいけどちょっと面白い解説など。