600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス


クックパッドというWebサービスをご存知だろうか。
600万人を超える会員を集める、料理レシピの投稿・閲覧サイトだ。


クックパッドというビジネスを一言で表現すると、代表である佐野の強烈な『こだわり』だと言えよう。


佐野が会社を立ち上げるに至った過程。
その事業に込めた思い。
事業が軌道に乗った後も、理念に基づいた、全てのサードパーティーが笑顔になる方法の模索と実践。


技術者であり、しかも高度な技術を要する事業運営を行ないながらも「技術はあくまでも手段であり、道具である」との考えのもと、ユーザー視点に徹底してこだわったからこそ、女性に支持されるサイト運営を行えたのだという点は、Webビジネスに携わる者にとっての生きた教訓となろう。


クックパッドの収益源は広告収入であるが、広告主に迎合せず、常にユーザー第一を貫き、かつ広告主ともWin-Winの関係を築けた事例は、フリービジネスを展開する者にとっても学ぶところは大きいはず。ここに至るまでの佐野と新たなスタッフとの出会いも興味深い。


アクションを起こす上で、常に「何のために」を考え組織で共有する合理主義は、ただのトップダウンではなく、組織の全員が自発的に考え、行動する姿勢を促す。ファンクショナルアプローチに近いものを感じるが、現場で洗練された組織運営術として興味深い。



だが、クックパッドの事業の歴史を語る上で、俗にクックパッド問題と呼ばれる(?)、クックパッドの直面した問題に全くと言っていいほど言及していない点は気になった。
このことに言及しなかった理由は、読み終わった今は理解できる。論点がぼやけるからだ。(だからここでも詳しくは触れない。興味ある人は調べてみてね。)
件の事件があったからこそ、今のクックパッドのシンプルな機能に落ち着いたことは想像できる。それを最初から「料理を楽しむのに不要なモノは作らない」とバッサリ書いちゃってるのはちょっとね。。
著者のクックパッド礼賛具合が、梅田望夫氏のウェブ進化論でのグーグル礼賛とは比較にならないほど鼻につくのが、宣伝っぽい感じも覚えた。



Webビジネスに携わる人、経営に興味ある人にも、学ぶところの多い一冊ではないだろうか。



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