クライマーズ・ハイ

クライマーズ・ハイ

クライマーズ・ハイ

男の生き様。
それも、特別な人間じゃない、どちらかといえば普通の男の生き様を描いたものだ。
あえて言うとしたら、常人より少し臆病で、少し頑固で、少し敏感であろうか。



舞台は群馬の一地方新聞社。
過去に自分の言動をきっかけに部下を亡くし、40を超えて管理職につかずに一記者であった主人公の悠木は、御巣鷹山日航ジャンボ機墜落事故の全権デスクに任命される。


一民間企業という組織とジャーナリズムの葛藤、社内の派閥争い、世代間の下卑た感情、家庭、元部下の遺族・・・様々なしがらみの中、己の臆病さに打ちひしがれながらなお、己の確固たる思いを曲げまいとする意思が、悠木を幾度となく突き動かす。


逃げ、敗れ、背中を押され、時に感情的に立ち向かっていく、男の生き様を描く。
様々な要素が絡み合い、複雑な感情が入り組む、感情移入して理解するのに決して簡単な物語ではないが、年を経るごとにじっくり味わいたい奥深い作品だ。
(ちなみに、人によって評価がかなり割れるらしいが、年配男性ほどウケが良く、女性にはかなりウケが悪いらしい。)



この本を手にしたのは、映画が良かったからだ(最初からちゃんと見てたわけではなかったが。。)。
映画はもっとシンプルでわかりやすかい。
己の正義を通すこと、その辺りが強く描かれている印象を受けた。
描く場面もだいぶ限定してるし、制作側が優秀だったかな。
原作にない言葉やストーリーもあったしね。


映画には(たぶん)無かった、ジャーナリズムの命題、「命の重さ」とは。

「命には大きい、小さい、がある。
でも、それは相対的なものだ。」
と、オレは思うけどね。
地球の裏側の知らない人より、目の前の人の方が大事だよ。
それは、ニュースバリューとは違う次元のものだ。


映画を見てからは原作を見た身としては、ちょっと冗長かなとも思ったが、最後もう一山、しっかり描かれている。
最後に訪れる何とも言えない読後感に浸っていただきたい。


クライマーズ・ハイ [DVD]

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