テルマエ・ロマエに思う、原子力の未来

テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)

テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)

会社の先輩に借りた。
いや、なかなか興味深かったですねー。


あらすじをざっくり言うと。
紀元前(AD120年頃)のローマ。
現代の日本の銭湯のように、公衆浴場が人々の生活に浸透していた時代。
一介の浴場設計士が、数々の難題に直面するたびに日本の浴場に都合よくタイムスリップ、ヒントを獲得して解決していく物語。



なるほど、どっかのビジネス入門書とかにありそうなストーリーといえばそうだけど、ローマと風呂を結びつけた辺り、ニッチで面白いアイデアですね。
なにより、作者の風呂への愛情がひしひし感じられるし、ローマや古代の浴場の取材も入念で勉強になります。
日本では卑弥呼が占いで政治をしていた頃よりも前の時代に、厳格な階級制度はあれど、民の世論にも耳を傾けた王政があったことは実に興味深いやね。
また、古代ローマの高度な科学知識、技術にも驚くことは多々。




さて、公衆浴場を街の至る所に築いていたローマ人、大量の湯を沸かしていたのだから、蒸気の力を既に知っていたのではないかとの考察がされていますが、どうも蒸気を動力とするおもちゃ程度のものは作られていたようで。
人が蒸気機関を獲得するのは18世紀のイギリス、産業革命が初、と思っているのはオレだけじゃないはず。。
いやはや驚きではあるけれど、ではなぜ古代ローマ人蒸気機関という産業のあり方すら変えうる技術を手放してしまったのか。



◆産業構造
産業革命による大きな変革の一つが、産業構造の変化。
いわゆる家内制手工業から、工場制機械工業への変遷。
これによる莫大な恩恵を受けたのが、イギリスの紡績業と製鉄業。
当時はまだ、産業構造自体が成熟していなかったし、綿織物や鉄の大規模生産ができる機械を作るだけの技術力がなかったんでしょうね。


化石燃料を持っていなかった
産業革命が起こった大きな要因の一つが、石油・石炭の化石燃料の獲得。
薪や木炭による燃焼効率がそこまで大きくはなかったのでしょうね。


事故
これは、作者の文の中にもあったのだけれど。
爆発事故等が起こり、この危険を伴う巨大な力を安全に使いこなすことに挫折したのではないか、と。
犠牲を払ってまでも、国家の成長・発展の為に利用し続ける対象となるほど成熟はしなかったようですね。





最後の事故、という点においては色々と思うところがあるのはオレだけではないはず。
自動車、飛行機、火力発電、石油化学工業・・・
経済発展と豊かな暮らしを支える新しい技術は、常に事故や環境破壊による犠牲を払って成長してきた。
それは今尚、減少しつつはあるけれど皆無となっているわけではない。
それでも新たな技術を使い続けるのは、事故が起きても車に乗り続けるのは、公害によって健康を害する人が増えても工業製品を生産し続けてきたのは、国家の方針のみならず、国民の選択でもあるんだよね。




今の御時世、どうしても原子力エネルギーのことに考えは至る。
莫大なエネルギーを使いこなすことは、一歩間違えればとてつもない被害をもたらす諸刃の剣。
このエネルギーを、危険だからと捨て去るのか、時に犠牲を払いながら使いこなしていく技術を習得していくのか。
人類の歴史を振り返ってみると・・・。



今、仮に原子力を完全に放棄したとしても、数千年の後には、きっと原子力はなくてはならないエネルギー元として、人類の生存自体を支えているだろう。
いや、もう核融合使いこなしてるかな。。それとももっと別の・・・。
古代ローマ人は、二千年後の人類が蒸気機関で夜に昼を作り出していることなんか想像だにできなかっただろう。
果たして数千年後、今使いこなすのが困難な原子力技術が一体どのような用途に使われているのか。。



そんな時空を超えた妄想についふけってしまいそうな、興味深い漫画です。
どーやら映画化もされるようで、生真面目さゆえのシュールな笑いを阿部寛がどう演じるかはちょっと興味をそそらないでもない。。
気になる人は見てみたらー。



じゃ。