「完璧なソースなどといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」

僕が大学生の頃偶然に知り合ったあるプログラマは僕に向かってそう言った。
僕がその本当の意味を理解できたのはずっと後のことだったが、少なくともそれをある種の慰めとしてとることも可能であった。完璧なソースなんて存在しない、と。
しかし、それでもやはり何かを書くという段になると、いつも絶望的な気分に襲われる事になった。



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僕にとってソースを書くのはひどく苦痛な作業である。一ヶ月かけて一行も書けないこともあれば、三日三晩書き続けた挙句それがみんな見当違いといったこともある。
それにもかかわらず、ソースを書くことは楽しい作業でもある。生きることの困難さに比べ、それに意味をつけるのはあまりにも簡単だからだ。



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夜中の3時に寝静まった台所の冷蔵庫を漁るような人間には、それだけのソースしか書くことはできない。
そして、それが僕だ。













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村上春樹 『風の歌を聴け』の序盤。
「文章」→「ソース」
「作家」→「プログラマ
に変えてみた。


うん、なんかいいやん。(雰囲気)



風の歌を聴け (講談社文庫)

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