吉田調書

『吉田調書』とやらをKindleに落として読んでいる。
原発事故自体への興味というのは(時間の経過のせいもあるだろうけど)それほど強い興味は無いのだけれど、この調書にはスゴく興味を惹かれた。



政府事故調査委員会ヒアリング記録 - 内閣官房



国の政策方針を、いや、国の存亡をも左右しかねない大惨事を目の前にして、その現場責任者が何を考え、どう行動したのか。
その生々しい取り調べの記録が無償公開されると。
この調書で語られたことが真実かどうかはわからないけど、裁判記録のようなわかりにくい文体ではなく、綺麗にまとめられたドキュメンタリーでもなく、インタビュー録音をそのまま起こしたかのような文章は、ノンフィクションとしての生々しさは真に迫るものがある。



当初公開されない予定だったこれらの調書が公開されたのは、マスコミによる報道の食い違いで憶測や虚報がひとり歩きすることを憂いたため。
ジャーナリズムの信用の失墜というか、もはや情報はソースを得て自分の目で確認し、判断しなければいけない時代なんだね。。(悲哀



これを公開することによる意義は小さくはないと思うけれど、今回は(上手くまとめきれなかったので)この原文を読むことで率直にダイレクトに感じたことをメモ。



◆有事の際の考え方
「ヤバいこと」が起きたときの対処方法。
東電が組織としてどのような体制で事にあたったかが、吉田調書序盤のインタビュー内容だ。
トラブルの発生、徐々に明らかになっていく事態の深刻さと、現場と東電本社・官邸との意識の乖離。現場の人間視点でこれを眺めるのは、踊る大捜査線を彷彿とさせるものだった。
有事の際に如何に味方を増やし、敵をなくすのか、永遠の課題なのかもしれない。
このことによって抱える現場責任者と憤りがストレートに伝わってくる。



◆リーダーとしての行動
有事の際に何をなすべきか。
このことについての吉田所長の言動は明快だ。
常に、状況把握を行い、その時点での最善に向けて邁進する。それ以外のことは意に介さない。(首相の乗ったヘリに向かって放射性物質の混じった機体が拡散されたとしても!官邸の意に沿わない海水注入も!)
現場のリーダーとして、今何が最も重要か、わかっている人間の覚悟と責任感が伝わってくる。



古典は原文を読むべし派の自分としては、吉田調書についても、全てを理解せずともまずは原文を読むことはやはり意義深い。
きっとこれを読んだジャーナリストが、色々な説明や解釈を加えたわかりやすい本を書いてくれるんだろうけれど、自分がまずオリジナルを目にして何を考え、感じたかを大事にしたい。



蛇足ではあるが。
k2pdfopt というソフトでPDFをKindle用にフォーマットして読んでるけど、むちゃくちゃ読みづらい。
フォーマット前はKindleでは読めないので、読めるようになったという点ではいいんだけど、この調書のフォーマットは特殊なのかな?
大量のPDFを手軽に読むのって結構ハードル高いんだよね。
Kindleがそれを読みやすいフォーマットで実現してくれたら、Kindleの価値は更に上がるのだけれど。
現状、Kindleに入れることはできるけど、電子書籍なら可能な、文章を選んでハイライトしたり、ページにしおりやメモを残したりができないし。
この辺も、Amazonが解決してくれないかなぁー。